知見の構造化と不具合の防止

知見構造化のイメージ

知見を構造化する手法をご存じでしょうか?

ここでは、事象(何かが原因で何かが起こり、それが原因で更に何かが起こる)の因果関係を明確化する手法と、それによる知識の構造化と 水平展開の重要性を説明します。

ある概念を分類化する方法として「分節化」という方法があります。
また、事象を「概念化(or 一般化)」して事象を一般概念として置き換える事により、一見、専門分野とか特定の部品や機構によって発生してた事象が、実はもっと一般的な分野や部品や機構でも発生し得る、という水平展開が可能になります。
これらを探求して行く事で、例えば ある企業での不具合事例が更に広く水平展開や気付きを与えるライブラリーになり、不具合の未然防止やFMEAに価値が出ます。


現場で発生する事象や不具合は、多くの場合、特定の製品や部品、あるいはその設計・運用環境に依存している様に見えます。しかし、それらを深く分析し、その因果関係を明確にしながら概念化・一般化する事で、個別の事象を超えた知見を得る事ができます。
このプロセスは、以下のような手法で進められます。


1. 因果関係の分解(分節化)

不具合や課題が発生する際には「何故それが起きたのか」を深掘りし、原因と結果の関係性を整理します。
れは例えば「Aが原因で Eという不具合現象が発生した」という直結な関係でなく
「Aが原因でBという事象が発生した」→
→「Bという現象が原因で Cという事象が発生した」→
→「Cという現象が原因で Dという事象が発生した」→
→「Dという現象が原因で Eという不具合現象が発生した」という文節で表現するものです。

それら1つ1つの文節が、個々に いわゆるFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)的なナレッジとなり得ます。
この整理は、部品や設計種別ごとに行う事で、同様の課題が再発するリスクを削減するだけでなく、他の製品や分野への応用も可能にします。

2. 概念化(一般化)

特定の事象や現象を、その本質的な特性に基づいて一般化します。 例えば、ある製品の特定の不具合が、他の製品や部品にも共通する設計上のリスクである可能性を示す事ができます。
この概念化により、問題解決の方法が特定の範囲を超えて適用可能となり、設計知見やリスク管理の効率化に繋がります。

それは、例えば 「テフロン製両面テープ」という部品が原因で、何等かの不具合(例えば 熱によって、貼布したテープが剥がれてしまった)が発生した場合に「テフロン製両面テープ」という特定部品に限定して不具合知見をライブラリー化するのでなく、
この不具合が「テフロン」という特定材料のみに関係するものでないなら「テフロン」の限定は不要。
また「両面テープ」という特定の仕様に関係するものでないなら「両面」という限定は不要。
となると、「接着剤」や「接着テープ」という「概念」でライブラリー化した方が水平展開の優位性が増すという考え方です。

それは「接着剤は熱に弱い(熱がリスクである)」という幅広い知見となり、水平展開の価値が増える訳です。

3. 知識の水平展開

概念化された知見を活用し、他の部品、モジュール、あるいは製品カテゴリーに適用する事で、設計の改善や品質向上の為の新たなアイデアを得る事ができます。

このプロセスは、不具合事例を共有ライブラリーとして活用し、FMEA(故障モード影響解析)やCAPA(是正処置・予防処置)のプロセスを強化する効果があります。

4. メリットと価値

これらの手法を活用する事で、不具合情報が単なる記録やクロージング(是正措置)ではなく、将来の設計改善や未然防止策(予防措置)に寄与する「ナレッジ」として再活用されます。
特に、以下のような成果が期待できます:

  • 設計プロセスの効率化と信頼性向上
  • 不具合再発防止の具体的手段の明確化
  • 組織横断的な知識共有とイノベーションの促進

このように、事象の因果関係を構造化し、概念化・一般化を通じて水平展開する事は、単なる問題解決を超え、組織全体での継続的改善を支える強力なフレームワークとなります。


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