QFDは、顧客要求を要件に落し込み、製品やサービス設計に反映させるロジカルな手法です。
現代のビジネス環境では顧客のニーズを的確に捉え、設計開発やサービス企画に反映する力が求められます。
この中でQFD(品質機能展開)重要な役割を果たします。
QFDは単なる設計手法に留まらず、効率的で効果的なプロセス展開を実現し、更に我々のロジカルシンキング(論理的思考)の能力が養われます。
1. 簡単な実施例をご紹介します。「ハサミ」の開発事例です

先ず、顧客の要求事項(ハサミに対する要望)を挙げます。
QFDでは顧客の「声」(Voice of Customer)を収集しそれを具体的な設計要件に変換します。
ここではVOC(Voice of Customer:顧客の声)などを元に顧客の要求(User Requirement)として幾つか挙げてみました。
次に、ハサミ製品の設計に対しての要求事項を挙げています。
これは製品要求(Product Requirement)とも言いますが、特性面として品質特性とも呼びます。

この図では、それら顧客要求と製品要求の間での因果関係のある部分を矢印で結んでいます。
因果関係は必ずしも1対1や1対多だけでなく、この様に多対1や多対多になる事もあります。

今度は絵図を消して「顧客の要求」と「設計への要求」をツリー図で表示したものとなります。
このプロセスでは曖昧な要求を論理的に分解し階層的に整理する力が求められます。
この矢印線はトレーサビリティ状態を表しており、例えばこの中の何か1つの要件を変更しようとした場合、それに影響する上流または下流の要件を簡単に見つける事ができます。
その様にして影響する部分を検証する事を「インパクトレビュー」と言います。
この例ではメカ的な要素での展開モデルを示しましたが、電気設計やソフトウェア設計に於いても同じ様に展開できます。
また、製品開発(モノ作り)だけでなくサービス展開(コト作り)でのQFDも同じ様に展開できます。 その場合は「設計への要求」が「サービスへの要求」に変わる事になります。
QFDは製品開発だけでなく、サービス業界においても顧客のニーズを起点とした要件展開とトレーサビリティの確保を通じて、品質向上と効率化に寄与します。
2. QFDがロジカルシンキングを鍛える理由
- ニーズを構造化する力
QFDでは、顧客の「声」(Voice of Customer)を収集し、それを具体的な設計要件に変換します。このプロセスでは曖昧な要求を論理的に分解し階層的に整理する力が求められます。
これにより複雑な要件を整理する能力が自然と鍛えられます。 - 課題と解決策の関連付け
顧客の要求に対してどの様な技術や機能が解決策となるのかを明確に関連付けるのがQFDの基本です。このプロセスでは要件と解決策の因果関係を論理的に検証する力が養われます。 - 優先順位の判断
QFDでは全ての要求を満たすのではなく、顧客にとって最も重要な要素を優先して設計に反映します。この優先順位の設定は、論理的に情報を整理し客観的な判断を行う能力を高める訓練となります。
3. QFDの学びがもたらす実務への効果
QFDを通じてロジカルシンキングの能力を向上させる事は、次のような実務効果をもたらします:
- 顧客ニーズの本質を見抜く力
顧客の曖昧な要望の中に隠された本質を見つけ出し、価値ある解決策を提供できる。 - チーム間のコミュニケーションの円滑化
QFDの構造化されたアプローチにより、全員が共通認識を持ちながらプロジェクトを進行可能。 - 製品やサービスの競争力向上
顧客にとって最も価値のある機能に焦点を当てた設計が実現する。
4. QFDを活用して論理的思考を磨く
これからの時代、技術力だけでなく論理的に考え説得力のあるアイデアを生み出す力が求められます。
QFDは単なる設計ツールではなく、私達の思考の枠組みそのものを広げる訓練場です。
設計開発やサービス企画を考える際にQFDを取り入れる事で、論理的で説得力のある企画力を手に入れる事ができます。
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