QFD展開やQRFLP展開に対して「V字モデル」という展開の仕方があります。
V字モデル(V-Model)は、QRFLPやMBSEを含む設計プロセスにおいて、検証(Verification)と妥当性確認(Validation)の重要性を明確に組み込んだ方法論です。
このモデルをQRFLPやMBSEの展開に統合すると、設計の信頼性と顧客満足度をさらに向上させることができます。
1. V字モデルとは?
V字モデルは、ソフトウェア開発やシステム工学に於いて広く使われているライフサイクルモデルです。
V字の左側が要件定義や設計プロセス、右側がその設計の検証や妥当性確認を表します。(図を参照)
V字の下降線(左半分)では、上記QRFLP的な展開をしますが、 その最下端は製品の試作品だったり、最終製品だったりします。
そうすると例えば、V字の上昇線(右半分)の下部では、設計へのインプットに対して、実際の製品(や試作製品)の「設計のアウトプット」つまりモノの出来栄えを検証するというフェーズを取り入れ、設計検証(Verification)として記述します。
また、V字の上昇線(右半分)の中部では、ユーザー要求の各要件に対して、上記実際の製品や試作品に対して、そのユーザーがどの様に評価するか?(したか?)をするユーザー評価(Validation)するフェーズとして、記述して進めるものです。
- 左側(下降線): QRFLPやMBSEのようなプロセスを使って、顧客要求を具体的な設計や製品に展開して行く。
- 右側(上昇線): 左側で展開した設計に対して、実際の製品や試作品を基に現物での設計検証(Verification)をして、更にはユーザーによる妥当性の評価(Validation)、ユーザー評価を行なう。
2. V字モデルにおける主要フェーズ
(1)下降線(左半分)
- 顧客要求(User Requirement)
ユーザーや規制からの要求事項を収集し、それを機能要件として明確化する。 - 機能設計(Function)
要求を満たすための具体的な機能を定義する。 - 論理設計(Logical Design)
MBSE等を活用して、機能を論理的に構造化する。 - 物理設計(Physical Design)
論理設計を基に詳細設計を行い、製造可能な形に具体化する。 - 試作品/最終製品の作成
設計を基に試作品または最終製品を製造する。
(2)上昇線(右半分)
- 設計検証(Verification)
- 設計に対して、実際の試作品や最終製品が仕様通りに機能しているかを検証するフェーズ。
- 例えば、試作品が設計要件(Physical Design)を正確に反映しているか、動作試験や仕様適合試験を通じて確認。
- 工程例:
- ハードウェアの動作試験。
- ソフトウェアのユニットテストや統合テスト。
- 製品仕様書との一致確認。
- 妥当性確認(Validation)・ユーザー評価
- ユーザー要求(User Requirement)が、最終製品によって適切に満たされているかを確認。
- 実際のユーザーが製品を使用するシナリオを再現し、使用感や満足度を測定。
- 工程例:
- 顧客インタビューやアンケート。
- ユーザビリティテスト。
- 現場環境での試用テスト。
3. V字モデルの利点
(1)設計プロセスの透明性
- 各フェーズが明確に定義され、次のステップへの進行条件が厳格に管理される
(2)早期問題検出
- 検証(Verification)によって、試作品の段階で設計の欠陥を特定可能。
(3)ユーザー満足度向上
- 妥当性確認(Validation)によって、製品が顧客の期待を正確に満たしていることを確認できる。
(4)トレーサビリティ
- 要求から設計、検証、妥当性確認までの一貫性を追跡可能。
V字モデルをQRFLPやMBSEに統合することで、設計から顧客評価までのプロセスを一貫して管理し、顧客満足度と製品品質を最大化する事が可能になります。
この拡張モデルは、規制が厳しく複雑な設計が求められる分野(医療機器、航空宇宙、自動車など)で特に有効です。