要件間の関係と効率的な管理手法
製品開発やプロジェクト管理では、多数の要件が複雑に絡み合い各々が相互に影響を及ぼし合います。特にユーザー要求(User Requirement)、製品要求(Product Requirement)、設計仕様のような要素間の関係は「1対1」や「1対多」でなく「多対多」の関係になる事が一般的です。
これを適切に管理する事がプロジェクトの成功において重要な鍵となります。
その目的で、要件管理ツール、トレーサビリティ管理ツールというものが存在します。
1. トレーサビリティについて
現代の製品開発や業務プロセス管理に於いて、トレーサビリティ(要件間の追跡可能性)は極めて重要な役割を果たしています。
特に、多くの業界におけるトレーサビリティは、単純な「1対多」の構造ではなく「多対多」つまりスーパー木構造(ハイパーツリー)、或いはオブジェクトDB的な関係になるケースが多く、この様な関係を効果的に管理する為には、従来のリスト形式や単純なツリー構造を超えたアプローチが求められます。
その場合に、例えば「iQUAVIS」の様な要件管理ツールの活用は優位になります。
2. 多対多の関係性の可視化
多対多の関係を可視化する事は、要件間の関係性を直感的に把握したり、或いは変更点に対する影響範囲を効果的効率的に特定する為に重要です。
この多対多を可視化しない従来のリスト形式での管理では、以下の課題を伴う事が多いです:
- 要件の重複記載が生じやすい。
- 要件変更時の影響範囲が直感的に把握しにくい。
- 手動での管理が煩雑でミスが発生しやすい。
これらの課題を解消する手段として、ツリー図と一覧表(リスト表示)を適宜組み合わせて使用することが推奨されます。 多くのトレーサビリティ管理ツールではこれが実現できます。
その事について、説明します。
3. ツリー図と一覧表の活用
前回の別ページ(QFD展開とQRFLP)で事例をあげた「ハサミの開発におけるQFD」を元に説明します。


ツリー図(左図)の利点
- 要件の階層構造を直感的に把握できる
ユーザー要求から設計パラメーターまでの流れを、視覚的に整理できます。 - 変更時の影響範囲が明確
ツリー図を利用すれば、ある1つの変更点がどの要件や設計に影響を及ぼすかを迅速に可視化できます(影響範囲を特定して検証する「インパクトレビュー」の容易化)。
一覧表orリスト表示(右図)の利点
- 詳細情報の一元管理が可能
リスト形式は、全ての要件や仕様を網羅的に管理するのに適しています。 - 検索やフィルタリングが簡単
大量の情報を整理・抽出する際に便利です。
これらを適切に使い分ける事で、情報の管理効率と意思決定のスピードを向上させる事が可能です。
4. インパクトレビューの重要性
ツリー図を活用する事で、ある1つの変更がプロジェクト全体に与える影響を迅速に把握し検証する事ができます。このプロセスを「インパクトレビュー」と呼びます。
インパクトレビューは次の様な場面で役立ちます:
(1) 変更箇所の影響範囲の特定
- 要件間の繋がりを明確にする事で、見落としを防ぎます。
(2) 関係者との迅速な共有
- ツリー図を共有する事で、プロジェクトチーム全体が変更の影響を直感的に理解できます。
(3) リスクの最小化
- 要件変更が及ぼすリスクを正確に評価し、迅速に対応できます。
5.「 iQUAVIS」のような要件管理ツールの優位性
多対多のトレーサビリティを効果的に管理するためには、手動や単純なスプレッドシート形式では限界があります。
その点で、例えば「iQUAVIS」の様な専用の要件管理ツールは、次の様な優位性を発揮します。
(1) 要件間の横断的な可視化
- 要件(UR、PR、設計要素など)をノードとし、それらを繋ぐ関係性をリンクとして表現する事で、ハイパーツリー構造の様な全体像を視覚的に把握可能。
- 変更がネットワーク全体にどの様な影響を与えるかを、ツリー図や相関マップで即座に確認できます。(ツリー図上での影響範囲をハイライト表示し視覚的に特定できます)
(2) ツリー図とリスト表示の互換表示
- マインドマップ的に要件対要件の関係性を視覚的に把握したい場合はツリー表示、そして各要件に詳細の追記事項を記述して管理したい場合はシート表示という様に表示を相互互換できる。
- つまり、タスク管理には従来の様にExcelライクなシート表示で行なえる。
- FMEAやMBSE、MBDへの連携
- 要件展開に紐づけてFMEA(リスク管理手法)や、MBSE/MBD(ModelBaseなデザインレビューやエンジニアリング)に連携できる。
- 要件展開のタスクを元にしたプロジェクト管理(ガントチャート)の連携
- 更に、それら要件展開やその成果物の進捗管理はプロジェクト管理の基本であるが、このツールでは要件展開の内容を元にプロジェクトや各メンバーのWBS進捗管理(ガントチャート)として展開できる。
6. 効率的な管理手法の実践
要件間の関係性を効率的に管理する事で、製品の品質向上とプロジェクト管理の最適化が可能です。
ツリー図と一覧表を組み合わせた方法を導入し、情報を可視化・整理する事で、業務全体の透明性と生産性を高める事ができます。
この様な手法を貴社のプロジェクトに導入したい場合は、ぜひご相談ください。
効率的な活用方法や具体的なツールの選定や運用支援を行ないます。